植物栄養・肥料学研究室

研究テーマと特徴

  • 作物に栄養欠乏に耐える性質を持たせて、環境にやさしい農業に資する
  • 作物の栄養状態を推定し生育を予測する
  • 植物の栄養欠乏の感知や反応の仕組みを理解して改変する

作物の収穫には土壌に適切な無機栄養が含まれている必要があります。土壌の殆どは栄養が不足しており補うために肥料は不可欠です。肥料無しでは現在の食糧生産を維持できません。肥料は一方で資源を消費して作られ、施されます。地球環境を守るためにも少ない肥料での食糧生産が求められています。研究室では栄養欠乏に強い作物の育成、畑の作物の栄養状態を簡便に推測する方法の開発、植物が栄養状態を感知して生育を制御する仕組みの解明に取り組んでいます。

栄養欠乏に強い作物の育成

当研究室では世界に先駆けて栄養輸送体を同定し、それを利用した栄養欠乏に強い植物の作出に成功しました(左)。強い系統は欠乏条件でも実を付けています。野菜の品種による栄養欠乏の違い(左下:右が感受性、左が耐性)を利用して、交配系統の圃場調査(右上)に基づいた原因遺伝子推定や、優良系統の圃場での試験(右下)などを進めており、肥料低減への貢献を目指しています。

栄養分布による生育の予想や、画像を用いた栄養状態の推定

栄養欠乏を防ぐには、栄養の分布と生育との関係を知ることが重要です。植物体内での栄養の分布を知り、生育や症状との関係を明らかにすることや(左図)、植物の画像から植物の無機養分の含量を推定したり(右図)、植物の無機元素組成から、植物の生育を予測する試みを進めています。

輸送体局在をもとにした栄養分布の推定

当研究室で同定した栄養輸送体は根の様々な細胞で特徴的な分布をしています(左図)。この輸送体の分布をもとに、根での栄養の濃度分布を数理モデルを用いて推定し、この分布を実験により検証しました。右図は成果を発表した雑誌の表紙で色により栄養の濃度を表現しています。このような推定をもとにより効率的な栄養の輸送を目指しています。

栄養状態の感知と生育

当研究室では世界で初めて、植物の根が栄養の濃度の高い方に生育方向を変えることを見出し(右図:赤字の栄養源に向かって根が伸びる様子の経時変化) 、栄養屈性と名付けました。また、栄養の濃度をリボソームが感知していることを初めて見出しました(下図)。植物の巧みな栄養感知機構を理解し制御することで、栄養欠乏に強い作物の作出を目指しています。

東京大学 大学院農学生命科学研究科 応用生命化学専攻

教授  藤原 徹
准教授 神谷 岳洋
助教授 反田 尚之

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東京大学国際オープンイノベーション機構
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