中辻・酒井研究室
研究テーマと特徴
- 物質中のトポロジーと新規量子現象の探索
- 電子構造のトポロジーを駆使した量子熱電変換・熱流センサーの開発
- トポロジカル反強磁性体を用いた超高速不揮発性メモリの創製
Society5.0 や省エネ・脱炭素社会など新たな未来社会を実現するために、従来の概念や技術に捉われない革 新的なアプローチが必要となっています。我々は現在物性物理において発展著しいトポロジカル物性を用いる ことで、新しいエレクトロニクス、エネルギー変換技術、および光学機能の開発とそれらを応用したデバイス 開発を行っています。
従来型熱電モジュール(ペルチエ素子)(左)と磁気熱電効果を使った新しい熱電モジュール(右)。
従来の熱電変換ではp-n 接合と呼ばれる複雑な立体構造を作る必要があるため、接合による製造コストや大面積化などに課題がありました。磁気熱電効果では熱流方向に垂直に発電するため、立体構造は不要でフレキシブル化により熱源に沿った大面積の発電や熱流のセンシングが容易に行える利点があります。我々は従来の10倍大きな磁気熱電効果を実現することで、応用の可能性を飛躍的に広げました。
Nature Physics (2017, 2018), Nature (2020).
量子熱流センサーによる熱流測定(左)とセンサーの顕微鏡像(右)
Adv. Funct. Mater. (2021).
巨大な仮想磁場を持つトポロジカルな電子構造: ワイル点(左)とスピン軌道トルクによる仮想磁場の電気的制御の概要図(下)、トポロジカル反強磁性体と重金属からなるメモリ素子を用いた多値記憶の実証実験結果(右)。
不揮発性メモリには強磁性体が用いられていますが、集積化や応答速度が限界に達しつつあります。一方「反強磁性体」は高速・高集積不揮発性メモリデバイスを実現する可能性を秘めているものの、電気的な制御が極めて困難でした。我々はワイル反強磁性体において巨大応答が電気的に制御可能であることを初めて示し
ました。脳型計算機や量子コンピューター、データセンター応用につながることが期待されます。
Nature (2020), Small Science (2021).